3/30 狂鬼戦争（5/5）

最後まで、背中を合わせて。

一人じゃないと感じられるものが、
胸元に、左手に、そして背中に。

いつの間にか
香坂と一緒に戦場を駆け抜けるのが当たり前になっていた。

もうすぐ

もうすぐ終わるはずだ。


只管に踊り狂い、これは江間の分、これは白馬の分、これは雨音の分、これは宇気比の分、これは鷹倉の分…と
勝手に顔を思い浮かべながら、一つ一つ丁寧に攻撃を打ち込んでゆく。







耳の奥に、

加護がありますように…と力強い声が響く。

決して聞き違いじゃ、ない。




私は生き残る。
誰の為でもない、自分の為に。
それを願ってくれる誰かの為に。






…。



最後の一体を吹き飛ばし、
見渡しの良くなった市庁舎周辺をぐるりと見回す。




終わった。

終わったんだ。




後ろの香坂にちらりと視線を遣り、
無事な様子を確かめた。


「…ほな、帰ろか」


二人連れ立って歩き出す。
沈みかけの夕日と気の早い立待月が、足元をぼんやりと照らしていた。



＝＝

カフェに戻る。

たった半日しか戦場に居なかったのに、まるで何日も経ったかのような感覚があった。



「おつかれさまーーーーーーーー！！」

「本当にみんなお疲れ様っ！」

「只今なんだぜ！」

「怪我はあったけど、皆が帰ってこられてよかったんだぜぃ♪」



よかった。

皆、元気だ。



緊張で固まった表情が少しずつ解れ、
安心からか眠気が襲ってくる。

手近なテーブルに突っ伏した。


ねむ…


…。


（何事かむにゃむにゃと呟いて、眠りに落ちてしまった）