3/30 狂鬼戦争（2/5）

（鳴らない目覚まし時計）

 

 

（がばっ）

 

…寝過ごした…！！！！

昨夜、カフェで夜更かしをしすぎた。
（主に江間に突っ込んでばかりだったが）

慌てて制服に着替え、昨夜の残り物をかっこんで部屋を飛び出す。
自転車に跨り走り出すと、浅い春の匂いが鼻から胸へと駆け抜けた。

今日は戦争。

左腕のエメラルドキャッツアイが、朝の光を浴びてやわらかく輝く。
イグニッションするときにいつも着けているスカーフが今日は、無い。

これで闘う。
これで生き残る。

 

＝＝

 

戦場に着き、カフェの皆が居る拠点へと駆け込んだ。
既に人影は少ない。

もみじヶ丘3丁目の戦況が次々と舞い込んでくる。
次はショッピングモールかオフィス街かと、知らない連中が慌しく駆けていくのが目に入り。

「だ、誰か…」

所在無く周囲を見回し、知った顔を捜してしまう。
それなのにこんなところを誰にも見られたくないという思いもあり、
馬鹿な矛盾に一人歯噛みした。

 

すると

「坤さん、良ければ一緒に組みませんー？
西ルート行く予定なんですけど、あたしもタッグ組む方探してて…」

 

思わず警戒したようにぱっと振り向く。
そこには香坂が立っていた。

 

「あ、ああ…いいところに！ちょっと待て、仕度してくるから…」

変な顔を見せなかっただろうかと不安になりながら、
手早くイグニッションを済ませる。

 

深呼吸を…

…ひとつ。

…ふたつ。

…みっつ。

バチンと両頬を叩き、
香坂の元へと駆け出す。

 

「…ほな、行こか！！」

 

その声に、そのイントネーションに。
つきまとっていたはずの暗い影。

ぬいの顔をした影は、
いつのまにか鳴りを潜めていた。

 

 

 

（ショッピングモールでの戦いの後、一息ついている間に迷子になったのは内緒だ）