「宇気比。」
さっきからしゅんとしている宇気比に視線を向ける。
呼ばれた瞬間、これから何を言われるか分かっているかのように目を伏せるのが遠目でも見て取れた。
そんな相手を目の前にしても、申し訳ない気持ちは微塵も湧かない。
つかつかと歩み寄り、憮然と腕組みで宇気比を見下ろした。
「…。 言うたよな、無理しても無茶しなやって。
聞いとったんかこの耳は。 あ?」
宇気比は黙っている。
手加減など、せん。
すっと、深く息を吸って。
「…こんのダボが!吸血鬼依頼もどうなっとうか分からんのに何しくさっとんねんな!
自分みたいに後先考えんと気持ちで突っ走りよるんが一番あかんのや!」
思う事がすらすらと言葉に、音に変わる。
…と思ったのは一瞬。
次の台詞を言おうとして、もう詰まってしまった。
「そういう…そういう奴ほど…」
さっきから目を合わせられない。
いっそ、と目をつぶって吐き捨てるように言葉を投げた。
「そういう奴ほどなあ…居らんくなったら哀しいねや!覚えとき!」
嘘じゃない。
嘘じゃないけれど。
嘘じゃないけれど、違う。
…。
宇気比がゆっくりと口を開いた。
「…うん、たわけだな、俺。
折角忠告してくれとったんに、無茶なことして死に掛けて。」
素直な声。
素直な視線。
私と違う。
「浦雪、本当に心配掛けてゴメン」
すっと頭を下げられ、それ以上怒鳴る気が一気に失せてしまった。
ゆっくり、目を見る。
まだ怒りが消えたわけではなかったけれど…
「私の応援なんぞせんと、ゆっくり休んどったらええねん…。
阿呆やろ、自分」
まるで、宇気比の素直な心根が視線を伝って流れ込んでくるようで。
今度は思い描いていなかった言葉がすらすらと。
「でもな、助かったんよ。ほんま。
…ありがとうやで。」
…。
今、何言った。
どんな顔してた。
これが、本音と呼べるものの正体…か?
かける言葉が端から消えていったさっきのように、また分からなくなり。
軽く頭を掻き毟ってそれを会話が終わる合図にした。
「とりあえず、養生し。…おつかれ。」
ぽいと小さな救急箱を投げて、
次に話すべき奴のところへと向かった。
宇気比の視線は苦手だ。
言葉が、顔が、うまく作れない。
1991年9月27日生 16歳
ゾンビハンター×月のエアライダー
高校1年9組
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earthbound
━━ a. 地球に向かっている; 地表を離れられない[に限られた]; 世俗的な; 平凡な, 想像力のない.
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