3/30 狂鬼戦争（4/5）

もう少し、もう少しなのに。

順調に戦況は進んでいく。
急ごしらえで組んだ香坂とのタッグもどうにか形になり、
時折背中越しの視線を送り合いながら、クラッシャー二人は道をただ前に切り開いた。

鬼を、狐を、ゾンビを、
ただ只管に蹴って切り裂いて吹き飛ばして罵って

 

カポエラの動きが段々と熱を帯びてくる。

踊る相手を傷つけないための技が、
私の生き残る手段として体の中で跳ね回る。
それは見えない誰かを、背中合わせの友を守る為に。

さあ踊ろう、
陽が落ちるまでただ。

 

「無理はしていい。…無茶だけはするな！」

 

届くかどうか分からないのに、
何処かで戦っている仲間へ向かって大音声を張り上げた。

届いて欲しい、気休めでしかないのに只管願いながら。

「…！！！」

鬼の一撃を真正面から受け、すんでのところでガードの構えをとる。
吹き飛ばされなかったし、何とか回復も間に合った。

私は　大丈夫だ。けれど。

 

ぴっ…

と胸元のプレートに小さなヒビが入る感触。

 

 

＿＿＿＿その声は　　　　　　　　きっと届かなかったのだと思う

 

 

 

 

＝＝

不安は的中した。



「宇気比！！！！！！」



下水道を制圧し、急ぎ拠点に戻って来てみれば。

覇気の無い、弱弱しく笑って周りを気遣う奴の姿が。

其処に。





江間の時とは違う気持ちが胸を突いた。
ただ…哀しい。


言葉が浮かんでは消える。


どんな顔をしていいか分からない。

分からない…。



「……ああ、もう！」