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(株)トミーウォーカー運営PBW「シルバーレイン」のどこかでうろうろしている高校生 浦雪坤 の色々。
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Tu fui, ego eris.

+ + + + + + + + + +
「ぬい。」


もう一度扉の前に立ち。
今度は遠慮せずに開けてみよう。



鍵はかかっていなかった。



かちゃりと響くドアノブの軽い音は
これで最後だと知っているみたいに




「ぬい。」




「何?」



冷たい、冷たい声。

私がそうさせた、可愛い妹。



何度言葉を紡いでもきっと通じることは無いだろう。



それならば





「………!」




「そのままでええから、聞いて」




意識せずに伸びた腕は

ずっと触れることの無かった細い背中を抱き締めて


あたたかさのあること

生きていることを久しぶりに確かめるように




「今から鎌倉帰るから。」




「高校卒業しても、きっと此処には戻って来うへん。」




「お姉ちゃんずっと、ぬいを傷つけてばっかりやってんな。」




身じろぎもせず。

けれど否定もしない。



ぬい。

可愛い妹。



本当にこれで最後だよ。




「あんたがずっと弱い子やって決め付けて、何にもさせんと。」



「でも分かって。そうでもせんと、お姉ちゃん誰にも見てもらえんて思ててん。」



「ぬいのこと大好きなのはほんまやのに、自分可愛さが邪魔して」




両手にぎゅっと力を込める。

自分より低い体温が、布越しに流れ込み、少しだけ切なくなった。




「我侭で、ぬいに哀しい思いさせたね。ごめんね。」




「だから、もう行かんと。でも」




「ぬいが呼んでくれるなら、いつだって帰るから。」





「だから」








「あの時言うたひどい事、謝らせて」




「ごめんな」







最後にもう一度だけ、ぎゅっと抱き締めて。

さよならは言わない。

あの時だって言わなかったから。




いつか、今の言葉が伝わるその日まで。




「またね。」






そっと離れて背を向ける。

この力に目覚めた時から、こうなることが決まっていたのなら。

ただ、待つだけ。


哀しくない。

寂しくない。


あるのは、愛しいという気持ちだけ。





後ろ手にドアを閉め、隣の部屋に置いた荷物を持ってもう一度階下へ降りた。

待っていたのは母と、慌てて帰ってきた父。



「坤」

「…お父さん」



にっこりと笑う。

父はそれを見て察してくれた。



「寂しくなったら帰ってきたらええ」

「うん」



この世界の仕組みなんてとても単純だ。

出来る人間が出来ることをする。

出来るようになってしまったのだから、行かなけりゃ。




「お父さん」

「お母さん」




私を私に生んでくれて

私という人間に育ててくれて

ありがとう。




「行ってきます。」






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プロフィール
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非公開
自己紹介:
■浦雪 坤(うらぶき こん)

1991年9月27日生 16歳
ゾンビハンター×月のエアライダー
高校1年9組



==
earthbound
━━ a. 地球に向かっている; 地表を離れられない[に限られた]; 世俗的な; 平凡な, 想像力のない.


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拙いアンオフィSSなどを書き散らすブログ。
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