7/5 さよならを教えて（4/5）

合わせ鏡は

いつか割れる

「どっちの話が本当か、今更確かめることは出来ん。
ただ、ぬいが夢を見たんでないことは分かるんよ」

 

まるで運命予報を聞いているかのように

確実な手ごたえを感じて頷く。

 

きっとこの先

母や父が何らかの能力に目覚めることはあっても

 

ぬいはそれが無いだろう。

 

それでいい。

 

「坤、答えよし。ぬいが夢やないて言ったところはほんまなんか？」

 

……。

記憶に残る限りの映像と音声が

頭の中で何度も繰り返す。

 

「ほんま、や」

 

認めなくちゃ

 

 

「双子に生まれたことでお母さんを恨んだりはせえへんかったよ。でも、」

 

認めなくちゃ

 

「双子やなかったら、て考えるのは毎日やった。」

 

私と

 

「私が勝手に私を追い詰めてただけや。」

 

ぬいは

 

「ぬいの代わりに何でも頑張らな、ぬいが普通やったらあたしはもっと可愛がられてたかもしれん、ぬいを守ってあげんとあかん、って」

 

違う人間で

 

 

「あの日だって」

 

たまたま競い合うように生まれる運命だったというだけ

 

「バケモン切り刻んで怪我一杯して、何であたしだけこんなことって思いながら」

 

止まった時計は

 

「それでもぬいを守らんとあかんって必死やってんよ」

 

長針と短針を重ねて

 

「ずっと私、ぬいにしたらあかんことばっかりしてきててん。だって」

 

錆を落とし

 

「同じ顔と声やもん。別の人間やって口で言っといて、ぬいのことを弱い自分みたいに思っとってん。」

 

正しく時を刻み始める

 

「せやし、悪いのは私。ぬいを抑えつけてたのは私や。」

 

まるで

 

「お母さん。」

 

 

悪い夢から醒めるのを待っていたかのように

 

「今度こそ、戻られへん。ぬいに謝ったら、鎌倉に………帰るわ。」