一晩経って、ぼんやりとした頭で昨夜の記憶をを辿る。
色々なことがありすぎて、ひとつひとつを思い返すだけで混乱しそうだ。
(……でも)
一箇所、霧は綺麗に晴れた。
手探りは終わったのだ。
今日は土曜日。
朝一番でカフェに行こう。
そうと決まれば、と
起き上がってから部屋を出るまでに何の躊躇も要らない自分が楽しくて。
自転車に跨ってMP3プレイヤーのスイッチを入れる。
刺激的な弦の響きが耳に流れ込み、否が応にも気分を高めてくれた。
「~♪ Tonight… I'm a rock 'n' roll star!!!」
朝一は○ASISに限る、と鼻歌も軽くペダルを踏む。
眩しい光、まだ少し涼しい風。
ん?
さー…と軽快に自転車を走らせるうち、見慣れた白い姿が目に入る。
イヤホンを外してゆっくり速度を落とし、前を歩くそいつに声をかけた。
「雪白。」
「ん?おー浦雪じゃん!」
いつもと同じ…否、
いつもよりずっと晴れやかな顔で振り向かれ、一瞬人を間違えたかと逡巡する。
前は確か、もっと。
そうだ、ぬいによく似た…閉じた扉のような頑なさがあったのだ。
それがすっかり消えている。
昨夜会った神風のことを一緒に思い出し、そうなのだろうと一人で納得した。
「…お前最近変わったな。」
素直な感想が口を突いて出るのに時間はかからない。
何が変わったのか、敢えて取りざたする必要も無いだろう。
「あ?そーか?んー、まー、あれだよ。」
あれってどれだ、等と意地の悪い疑問も湧かない。
それほど雪白は正しく笑っていた。
「それはおめでとうって言ってやったほうがいいのか?」
「ちょっとくしゃくしゃしてたんだけどもうなんともないんだぜ!」
そうか。
やっぱりそうか。
ふ、と微笑みが零れる。
それだけ聞けば充分だ。
「そうか。……先行くぞ。じゃ。」
「おーんじゃカフェでな!!」
イヤホンを嵌め直してもう一度ペダルを力強く踏み出す。
「………こそ、……顔………じゃん」
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雪白が最後に呟いた最高の一言は、
テンションの高いギターに掻き消され、浦雪の耳には届かなかった。
でもそれでいいのだろう。
これから少しずつ知っていけばいい。
彼女は目を開けて、まだ一日。
1991年9月27日生 16歳
ゾンビハンター×月のエアライダー
高校1年9組
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earthbound
━━ a. 地球に向かっている; 地表を離れられない[に限られた]; 世俗的な; 平凡な, 想像力のない.
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